世界の学校から

風来坊が綴る、世界の教育現場のあれこれ

プロフィシエント・バイリンガルを支える仕組み~OIB

 前回、バイリンガルと言ってもいろいろレベルがあること、両方の言語を高いレベルに引き上げることは難しいことに触れた。今回は、もっとも難関な「プロフィシェント・バイリンガル」を支えるフランスの教育システム「OIB」について、整理してみたい。 

 OIB Option Internationale de Baccaloréat:

    オプション インターナショナル バカロレア

 2018年現在で17国語でのオプションが用意されている。

そもそも、バカロレアは、高校卒業時に受ける試験で、中等教育修了と高等教育入学資格を併せて認定する国家資格であり、大学進学への切符になるもの。体育や音楽 、哲学など全教科の試験がある(ただし、受ける教科、獲得した点数のカウント法は、進んだコース(文系L,理系S,経済系ES)によって異なる)。

OIBはこれにプラスして、「母国語としての日本語」と「日本語で地歴」を受験することで、オプションの欄にOIB(japonais)と記載されることになる。

 

一つの国の教育カリキュラムの学習でも忙しくなる中学生ころ、子どもたちは必ず、

「どうして、プラスして日本語までやらないといけないの?」

「こんな内容勉強して何になるの?」

「どこまで日本語をやればいいの?きりがない。」

という質問をぶつけてくる。もちろん、二つの言語、文化を学ぶ意味を丁寧に説明するいい機会と思ってするけれど、なかなか分かっては…。こんな時、その努力を客観的に評価、方向づけ、価値づけてくれる公的な仕組みがあると、親子にとってどれだけ助かるか…。まさしく、それに応えてくれるのが、このOIBのシステム。

これをサポートできるカリキュラムをもつ学校は、2018年現在、フランスで3校(リヨン、パリ、ベルサイユ)、日本で1校(東京)の4校のみ。

 まだ調査途中だが、上記の学校でで働いている先生からの聞き取り、東京フランス国際学園、フランス教育省(Ministère de l’éducation nationale)の公式サイトから分かる範囲を整理してみた。

 

OIBの日本の試験を一言で表現すると、 

「日本の高校レベルの内容を理解し、フランスの形式に則って回答が求められる試験」

 とかなりハイレベルな要求をなされていることがわかる。これを取得できるのは、世界で今のところ毎年、たったの20-30人とのこと。OIBの日本語オプションを設立時からかかわってきた先生からの話だと、採点基準が厳しいというわけではなく、受験者数自体が少ないとの話。

 

では、OIB(日本語)の問題ってどんな問題で、誰が作るのか?

作るのは、OIBに対応できる日本語プログラムを用意している在日、在仏の上記の学校の教員。それぞれ2問ずつ作り、フランスの教育省にに送り、その後、日本の文科省に送られ、選出される。

 

【国語】

試験は筆記と口頭。

筆記は、日本語のみで回答が可能。問題は選択が可能で、1600字程度の小論文、あるいは問いと答え形式の問題のいずれかから選ぶ。問いと答え形式の問題にも400字から800字程度の論述式のものが含まれる。

口頭試験は、A4二枚程度のテキストが与えられ、その内容に沿って自分で問題を提起し、それについて発表する。中・長編作品の場合は作品の一部分が出題テキストとして与えられる。試験時間は全部で30分。通常は音読を含め20分以内で発表を行い、その後は試験官による質疑応答がある。

試験範囲は、両試験共に同じ。フランス教育省の公式文書をみると、古典から現代文までで範囲は広いが、3年ごとに課題図書が決められるようだ。2017-2019年の指定の課題図書は、次のようになっている。

 紀貫之「土佐日記」、鴨長明「方丈記」、兼好法師「徒然草」、森鴎外「舞姫」、芥川龍之介「地獄変」、三島由紀夫「復讐」、村上春樹「初めての文学」

 

【地歴】

試験は筆記と口頭。

筆記では、論述と資料分析が出題される。論述問題は選択が可能だが資料問題は一問のみ。論述問題が歴史の場合は資料問題は地理というように必ず地理と歴史分野の両方の問題がある。解答言語は筆記試験に限り日仏両言語が可能。ただし、いずれの言語で解答するかはバカロレア申込時に決めておくことが必要。

資料問題は通常、写真、諷刺画、グラフ、テキスト等2つの異なるタイプの資料が与えられ、問いに論述式で答える。また、クロッキー(白地図)も資料問題に含まれる。

口頭では、筆記試験同様に資料(グラフやテキスト等)が与えられ、そこに問題が提示されているのでそれに沿って10分程度の発表をする。発表に続いて試験からの質疑応答が行われる。試験時間は15分間。

地歴の範囲は、フランス教育省のサイトからOIBに絞った内容を見つけられない。おそらく、建前上は、フランスのカリキュラムと同じ範囲ということなのではないかと思っている。OIB日本語オプションのプログラムをもつリセ東京のサイトから社会のプログラムをみると、高校3年間でこのコースで学習する範囲は、次のようになっている。

地理:持続可能社会、フランスおよびヨーロッパの世界に広がる領土、世界地理

歴史:世界史におけるヨーロッパ人、20世紀の歴史、戦後世界史 

 

なお、OIB日本語オプションを受験する生徒は、第一外国語(LV1)が日本語ということになる。母語としてのフランス語の試験は試験ももちろんある。地歴に関しては、オプション(日本語)で受けるもののみである。試験については、もう少し、調査が必要。

 

このOIB、教師でありバイリンガル児の母親でもある私には、どれだけ大変かよくわかるのだけど、苦労して取得しても、未だ知名度が低く、それを大学入試や就職で切り札として使えないのが、現状。もちろん、これを目指す過程でバイリンガル、バイカルチュアルな子供に育っていくことは間違いないので、うちは目指すけれど…もうちょっと知名度を上げて、多くの子どもの動機付けになったらと思う。