世界の学校から

風来坊が綴る、世界の教育現場のあれこれ

なぜヒトは学ぶのか 教育を生物学的に考える①

なぜヒトは学ぶのか 教育を生物学的に考える (講談社現代新書)

https://www.amazon.co.jp/dp/B07H7HXV91/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_TLcwCbGY6BAY5


「先生の教え方や本人の中で変えられる要因の違いの影響はわずか、数字にすると大きく見積もっても全体の 20%程度、それに対して遺伝の影響は 50%、そして残り 30%は家庭環境の違いである」


教師としては、決して公の場では言えない話だけれども、当たり前の話だ。


この本は、

「頑張ればみんなできる」と言う日本の学校にはびこる幻想からの脱却
それぞれの能力、ペースに合わせて学習していくことの大切さ
生涯学習し続けていくことの大切さ

を、行動遺伝学のエビデンス、科学的根拠に基づいて再認識させてくれた。


だからといって、著者は教育をしなくて良いと言っているわけではもちろんない。


「あることがらをどの程度学ぶことができるかは、想像以上に遺伝子たちの条件に左右されていて、個人の努力でそれを大きく変えることはむずかしいことが科学的に示されている。」


言うのだ。だから、


「教育で大事なのは「どう」学べば他人と比べて成績を上げられるかではなく、むしろ「何を」学べばあなたが生きていくのに意味があるか ということだ。」


言葉1つとっても

   

「言葉、そして言葉が伝えるさまざまな知識とその知識が作り出す意味世界。それが社会の成り立ちを表す言葉であろうと、人の心の様子を表す言葉であろうと、世界の美しさを語る言葉であろうと、自然の仕組みを表す言葉であろうと、私たちの社会で使われている多様な言葉の何をどの程度の理解度で知るかで、あなた自身の生き方が違ってきます。」


全くその通りだと思う。


「可能な範囲で、この世界についてわかっていること、この世界を成り立たせていることについて、その人の遺伝的素質に沿った形で理解しておくこと、そしてより深く知ろうとし続けることは、その人の人生においてより確信に基づいた意思決定を可能にし、その人の生き方を左右すること」


「いずれの知識も、人類史を通じて、この世界に関して人間が知りえた膨大な知識であり、しかもそれらは直接は目に見える形で表現されていないことがほとんどですから、ただ日常性に埋没し、目先の仕事をこなすことだけに 汲々 としていたのでは知りえない」


として、学校教育、言うならば学校にとどまらない生涯にわたる教育の大切さを解いた本なのである。


長くなったのでここまで。次回は


   親、保護者としてできる事は無いのか


について、この本から得た知見をシェアしたい。