世界の学校から

風来坊が綴る、世界の教育現場のあれこれ

漢字とあそぼ⑤~海外育ちの子に漢字の「書き」は必要?

ファシリテータを務めるマルチリンガル漢字指導研究会(learnjapanonline.com/multilingual-kanji/)では、おおよそのメンバーは

 

  漢字は書きより読みが大事

 

という共通認識を持っている。理由は、

 

  今の時代、パソコンで打つ方が書くより多いので、

  書けなくても選べれば良い

 

書けなくても読めれば、世界が広がるし、入力すれば適切な漢字も選べる。

書くことに膨大な時間を割く意味があまりないと考えているから。

 

では、「書き」は、全くいらないだろうか?

 

 

漢字の「書き」はどこまで必要?

私の答えは、

 

  小学校3、4年生ぐらい漢字までは、「書き」もできた方がいい。



小学校3、4年生位までの漢字というのは、便宜上の言い方で、正確には、

 

  基本漢字

 

これ以上分解したら線になってしまう、この後のいろんな漢字の部品になる漢字。

例えば、「女」と言うのは、これ以上崩してしまうと線にしかならないので、基本漢字である。

 

書きをやった方がいい、一番の理由

  • 漢字の部品を塊で見ることが容易になり、漢字を頭の中で分解合成することができ、その後の漢字の習得が速くなる。


例えば、さっきの「女」を覚え、「市」「家」「未」など、どれも3年生くらいの基本漢字を覚えれば、「姉」「嫁」「妹」など、その後出てくるいろんな漢字は

 

  部品の足し算

 

と考えられるわけだ。 

 

娘の片仮名の習得の時に思ったのだけど、書く前は、「テ」「チ」「ナ」など、似ている字はうまく認識できない様子。お菓子コーナーで「チーズ味」といった、コンテクストでわかりそうな場面でも、「テーズ?」と読んだりする!それが、5,6回、書かせただけで、その後は格段と認識率が上がった。

 

また、シカゴでいろいろなレベルの子が集まる漢字ワークショップを観察した時も同じことを感じた。「龍」という難しい漢字を「知っているパーツに分けてみよう」という呼びかけに、すでに「立」「月」という漢字を「書きレベル」でマスターしている子は、さっさと、「立」「月」「ヒ」を部品で捉え、残りの部分に集中して、あっという間に書けるようになってしまった。

書きをやった方がいい、蛇足の理由

残りの二つの理由は、個人差、環境差が大きいと思うが、無視できないと思う点。

 

  • 漢字を書けると、子供の日本語学習のモチベーションが上がる

 

海外では、漢字が書けることは「かっこいい」とみなされるので。そもそも、この年代の子供は書くことを嫌がらない。

 

  • 夏休みの体験入学体験入学を楽しむため。

 

日本の学校に小学校の中学年位までは、体験入学する子が多い。その時にあまり周囲と差がつかないことも、その生活を楽しむには必要だから。

 

小学校5年生以降の「書き」は?

私の考えは、

 

  余力があればやればいい

 

そもそも4年生までの書きができてたら、「書き」はもうハードルではなくなる。

もし、この時点で何度も書かないと覚えられないのなら、それはまだ

 

  漢字を線で見ている

 

のだと思うので、前に戻って復習するか、もう、書くのはあきらめてもいいと思う。

ここからは、

 

  「音読み」の難しさ

  漢字の持つ多義語の難しさ

 

に対峙していかないといけないので、のんびり「書き」をやっている場合ではない(笑)

 

さてさて、漢字の読みが、100個ぐらいなんとな~くできるようになった小一娘に、そろそろ漢字の書きを導入しようかなと思ってるところ。

 

基本的に、学校現場でオーソドックスな方法

 

  なぞり書き

  空書き

 

の効果を自分が感じたことがないので、それは使わず、

 

  反復練習

 

はどうせ学校からの宿題で嫌でも出てくるので、それ以上は家でやらず、別の方法を模索してみたい。