ブックレビュー「もう教科書は強くない!日本語教師のための初級文法、文型 完全「文脈化」「個人化」アイデアブック」
9月から超久しぶりに初級の日本語を外国人向けに教えることになったので、慌てて手に取ったこの本。思いがけず、漢字指導の所がとても参考になったのでブックレビューとしてシェアしたい。
お勧めの人
- 海外で継承語として日本語を教えている先生
- 成人向け日本語教師
漢字指導の目的
マルチリンガル漢字指導法研究会を始めてから、一年位で行き着いた結論は、
1字1字の指導にこだわるのではなくて漢字の原理原則を教える
ということだった。考えてみれば当たり前のことだが、補習校などで学年配当漢字を限られた時間で教えないといけない環境にいる先生や保護者にとって、必ずしも当たり前のことではない。どうしても近視眼的になって、どうやって時間内に教え込むか、下手をすると終わらせるか、に目がいってしまうからだ。
でも、漢字のない環境で、しかも半分位の時間で子供たちに漢字を教えるのは所詮、無理なのだ。それなので、授業の中では、次のことにポイントを絞るべきだと思う。
- 漢字学習全般に応用が利く知識の伝達を確実に!
- 授業外で自学できるような動機付け、学習方法の紹介
日本語を外国語として教えることを前提としている、この本ではこのことについて、次のように表現されている。概ね言いたい事は同じだと思う。
日本語の漢字を教えるという事は…(略)「膨大な量の「漢字語彙」を自主的に学習できるような認知的学習戦略を与える」こと…(略)基本的な学習戦略を与えれば、どの漢字を学ぶかは学生個々が必要とする語彙の性格によって自然と決定されるので教室で全ての漢字を教える必要はありませんし、またそれは不可能です。p157
漢字指導法
筆者は、漢字の指導法を一般的なやり方とは逆な「トップダウン式」で行うことを提案している。
具体的には以下のステップを踏む。
- オーセンティックな資料の提示
具体的に、教えたい漢字が入っている生の資料(本や漫画の切り抜きなど)を掲示し、文脈から意味を想像、把握することから始める。=漢字の意味、音の理解 - 漢字を部品に分解してみる=漢字の形をとらえる
- 体を動かしながら部品を合成してみる=漢字の形を再現
手のひら→背中→紙上というふうにステップを踏みながら、形を習得。
トップダウンといういい方が適切なのかは疑問だけど、要は現実世界で実際に使われている文脈の中で、漢字の意味を想像して、音や形を覚えていくという方法。
これは、学習者にとって、すごくモチベーションが湧くだろうし、まさしく自分が持てっている知識を総動員して意味を理解しようとするだろう。特に、日本語以外の一般的な知識のバックグラウンドがある成人学習者には向いていると思う。
子ども学習者でも、語彙が豊富な子なら、お菓子のパッケージや工作の手順とか使ってできることもあるだろうし、教科書に沿ってやっている場合でも、読み方に使えたときに前後の文脈から想像させることも大事だと思う。
今、私が教えている現場は、教科書の縛りがあるけれど、時々はこういう導入の仕方をしてマンネリを防いだり、習った字を現実の世界から見つけてくる宿題を出したりして、漢字を少しでも「文脈化」「個人化」することで知識の定着を図りたいと思う。
その他、漢字の部品の分解合成は、御馴染み「ミチムラ式」の考え方とほぼ同じだけど、学習者によって、ここまでスモールステップを踏まないといけないのかという気付きになった。
学ぶ漢字、熟語の選択方法
継承語教室などで漢字を教える場合、必ずしも教科書に沿った学年配当漢字を意識して学ぶ必要は無い。その時迷うのは、
どの漢字を選ぶか
ということ。
また、学年が進むにつれて、漢字1字だけを教えても意味がなく、熟語とセットで教えていかなければならない。特に音読みしかないし漢字の場合は音と形だけだけ覚えても、全く意味をなさない。この時、指導していて悩むのは、
どんな熟語を選択するか
というところである。この本の筆者は、漢字の選別について以下のように述べている。
…漢字学習は外語彙学習の性格が強いので、学習者個々人の言語使用ニーズを考慮せずに「常用漢字× 字」などと字数でレベル設定することが適当でないと考えます。
「熟達度指針」…初級レベルの読み書き能力とその範囲内で必要な語彙群を記述してみると、次のようになると思います。簡単な書式や書類に情報を書き込むことができる。氏名、日付、国籍等、簡単な自己の経歴に関することを書くことができる。メニュー、地図、日程表、標識にあるような簡単な語句や指示表示が読み取れる。短いメッセージや手紙などが読み書きできる。
また、取り上げる語彙については、この本の中では具体的には述べられていないが、
そもそも漢字は語彙の1部として、基本的に個人の好みが強く出る学習項目なので、クラスをまとめて同じように教えるということが極めてしにくい分野でもあります。そのため、漢字の学習には「個人化」の指導理念が不可欠なものとなります。そこで、漢字指導の場合も、「語彙概念マップ」の手法を使うことをお勧めします。
としていて、「個人化」を勧めている。
これを読んで思ったのは、
どの漢字、熟語は目の前の子どもで変わるから、悩みすぎない
でいっかということ(笑)どうしても、将来覚えておいた方がいい言葉とか、考えてしまうけど、それよりは、今、学習者にとって意味がある文脈を考えた方が定着するのかなと。
もし、今、私が継承語教室で教えるとしたら…
ホップとして…
- 漢字がたのしくなる本シリーズ①の101の基本漢字の読み書きの習得
象形文字、指事文字の知識を交えながら楽しく読み書き
ステップとして…
- 漢字がたのしくなる本シリーズ②③④をつまみぐいしながら漢字の筋トレ
会意文字の意味を知りながら、ストーリー作りを楽しむ
部首の名前や意味をしり、漢字の意味を推測する
形成文字の仕組みを知って、漢字の読みを推測する
- 現実社会から子どもが興味がありそうな場面を漢字かな交じり文で提示
文脈の中で漢字を覚える
音訓読み、別の熟語など、できる限り知識を拡げる
ジャンプとして…
- アウトプットしたい場面設定をして、ワードに打ち込んで適切な漢字を選ぶ
- わからない漢字を調べる方法学ぶ
- 自分に合った持ち漢字数を増やす方法をみつける
という風に、教師主導型と学習者主体型とを組み合わせながらやりたいなと考えたのだった。
さてさて、漢字のことだけに焦点を当てたブックレビューとなったけど、日本語初級者向けの指導方法も、細かいコツを惜しみなくシェアしてくれていて、この本はお勧め。私ももう少し読み込まないと!
バイリンガルの娘に助けられる今
9月から久しぶりに現場復帰!
子供たちの通うフレンチスクールで国語、日本語を教えることに!
いろんな意味で挑戦。でも、これまでの私の経験を総動員すれば、きっとできると信じてがんばる!
授業が始まっていないうちから、帰ってくればぐったり。でもありがたいのは家族が協力してくれること。特に、長女のフランス語の助っ人ありがたい。まだまだ、フランス後のメールで間違いがないか、不安。でも、「手伝って」と言えば、長女が添削してくれる。いつもは、ぶつぶつ文句を言うのだけれども、今はママの勝負どころと思ってるので、すぐに飛んできてくれる。これがほんとに嬉しい。
昨日は、「ママ、お疲れ様。そういえば昔フルタイムで働いていた頃、いつも自分で今日もがんばった私」と言ってたよね?」と言われ、そうだったと思い出していた。
上2人が小さくて、仕事の後保育園に迎えに行って帰ってきて、そこで座ったら、もう立てないのでそのまま一気にお風呂、夕飯として、その後ソファーでぐったりしたときの私のセリフだった。
それで、思い出した。今、私の財布にいつも入っている娘からの小さな手紙ちょうど今の末っ子くらいの年だった。小学一、二年生。
長女はなかなかに手がかかる子どもだったけど、私をよく見ていて、本当に私が辛いときにはいつも助けてくれる。ありがたい。
苦労して育てた日仏バイリンガルの娘に、フランス語で今、助けられている。感慨深い!
漢字を書こう!④~テストと間違え直しのコツ
漢字「書き」に挑戦し始めた小一娘。先日、100字位の書きの練習を一通り終わらせたので、どのぐらい書けるようになったか、確認のために「テスト」してみた。と言っても、それは私にとってのテストであって、娘にはテストとは言わず、プレッシャーを与えないようにした。
その結果、習得率が半分だった事は、下の記事に書いた。
https://edu-kachan.hatenablog.com/entry/2020/08/27/061654
はじめは、わからなかった漢字は一覧表を見ながら、書き込ませようと思っていたのだけど、あまりに多いのでこれでは嫌になるかなぁと思って、後日別の方法を試した後に戻ろうと思っていた。ところが、
の仲間に
漢字を書く前に、101字漢字かるたの中から選ばせたら、もっと高得点が出たのでは?
というアドバイスを受けて、気持ちを取り直して
カルタを使った間違え直し
をしてみた。普通、子どもが嫌がる間違い直しを楽しくできたので、紹介する。
やり方
- できなかった漢字のカルタを101カルタから抜き出し、1枚1枚読み方を確認しながら並べる。
- 問題の本文を一度通しで読む。
- 一字一字、ゲーム形式でわからなかった漢字のカードを探す。
- 見つけたカードをよく見て自分なりに唱えてから、見ないで書く。
- できた文字に特別な印でマークしてあげて数を一緒に数える。
- 子供の疲れ具合を見ながら、1日に扱う数を調整する。
- ご褒美を共に楽しむ。
指導のポイント
- できなかった漢字のカルタを101カルタから抜き出し、1枚1枚読み方を確認しながら並べる。
何度でも復習の機会捉えて「読み」の確認をするのは大事。8割方わかると本人も嬉しいので、喜んで声を張り上げる。できなかったものは並べずもう一度カードの束の後ろに戻してもう一度やるといい。
- 問題の本文を一度通しで読む。
前回、書けるはずの漢字が書けなくてあれっと思ったのだけど、このステップを飛ばしていたことに気づいた~。問題文をしっかり読むって、当たり前のことだけど、まだテスト形式に慣れていない小1の娘にはここを丁寧に扱う必要があった!テストの形式に慣れるためでなく、漢字を文脈の中で覚える、使えるためには、こうした丁寧なケアが必要だった。反省。
- 一字一字、ゲーム形式でわからなかった漢字のカードを探す。
これが、みそ!一緒にカルタとりのように、「戦って」あげるだけで、もう子供は楽しいのだ。
- 見つけたカードをよく見て自分なりに唱えてから見ないで書く。
ここで、見ないで書かせることは大事。
- できた文字に特別な印でマークしてあげて数を一緒に数える。
どうでもいいことのように感じるが、子供にとっては丸の一つ付け方で気分が上がるので、こういう小技はできるだけ使ってあげるといい。今回は、★マークにした。
- 子供の疲れ具合を見ながら、1日に扱う数を調整する。
今回は3回に分けた。子供によってこの辺は違うのでうんざりする前にストップすることが大事。
- ご褒美を共に楽しむ。
やっぱり、書くのは子供にとって負担らしく、「漢字の勉強はいいけど、書くの以外!」と言ってきた(笑)なので、ご褒美の人参を釣るしてあげるのも大事。
今回は、本人が前から見たがっている映画のチケットにしたけど(漢字のワークシリーズ①をやりきることになるので)、工夫次第でお金のかからない、でも、親子のきずなも深まるようなご褒美を見つけるといいと思う。例えば、
リクエストのおやつ、夕飯メニューに答える
など。でも、子供にとっては、
勉強するときに横にいてあげること
やり方がわからない時にヒントをあげること
その子の伸びを看取って褒めてあげること
が十分ご褒美だったりする。
気づいたこと
テストをしたことで、覚えようと言う意識が働いている!
冒頭に書いたように、本人には「テスト」とは言っていない。けれど、どのぐらいできたか数えたので、本人は書けなかったことを悔しくは思っていたようだ。それで、良かった事は、書けなかった漢字を自ら覚えようとしていることをすごく感じること。「覚えている漢字」と「覚えてない漢字」をすごく意識しているのがわかった。
テストに嫌悪感を抱かせない工夫は大事だけど、やはり節目節目でテストというか、定着度を親子共々確認しながら、前進することは大事と感じた。
漢字を書こう!③~効果のほどは?
漢字を書こう!①②のように約2か月弱の取り組みで進めてきたのだけど、効果のほどは?という話。
なんとなくやっているだけで満足してしまうのだけど、時々立ち止まってその方法がいいのかどうか考えるのは大事。
漢字がたのしくなるワーク①の一番最後は、習った漢字をすべて使った作文になっているので、それを娘にやらせてみた。
で、結果は、約半分書けた。
イマイチ~
できるようになったこと
漢字を分解して知っている部分を探せるようになった
街を歩いていて知らない漢字に出合っても、「あ、父が隠れている(交)」とかいうように。
複雑な漢字でも知っている漢字にどんな部分が付け加わっているのかという視点で見ている。
書き順には一定の規則があることが分かった
横線を右から左に書いたり、縦線を下から上に書いたり、構えを四角のように一筆書きでかくような、のけぞるような書き方はなくなった。
唱えながら漢字を書いている
一画一言のルールに従って書いたり、部首や基本漢字はまとめて言えるようになったりしてる。
もう一息なこと
半分しか書けるようにならなかった
今は先取学習でどうせ学校で何度も書かされるので私自身がゆるゆるでいいという気持ちでいたのがよくなかったのかもしれない。
でも、4か月で100字程度読めて、2か月でうち50字書けるようになったのを良しとすべきかも。
細かい部分で間違える
残りの50字も全くわからないわけではない。「耳」の斜めに上がる横線が出ていないといった、惜しい間違いもある。
基本の100字はこの後、いろんな漢字の元になるので、正確に覚えてほしいと思ったとき、やっぱり
もう少し書く数を増やす
方がいいかも。今は1~2個なので、4~5個くらいまで。
文の中で使うのは難しい
そうか!と思ったのは、漢字単体を知っていても、文章の中で言葉を漢字に変換するというのはまた一つのハードルだということ。
書ける漢字でも一人でやっているとできないという。
その理由は二つ。
読むということに精一杯
音訓読みのどちらか一方を知らない
「これ、書けるんじゃない?」と促すとかけたり、「あ、これ回るじゃないの、回(かい)とも読むんだ」
といったりした。
まあでも、日常生活以外にも机上のドリルで漢字にいろんな出会い方をすることで、「あ、こんな使い方もあるんだ」と体得していくのかもしれない。
次の一歩
漢字アプリで目先を変えて書きの数を増やす。
漢字かるた、書きを意識したルールで遊ぶ。
平仮名で書かれたもの中で漢字で書けるもの探しをする。
ミチムラ式カードに挑戦する。
の4本立てでやってみる。
あの手この手で、諦めないぞ~!
漢字を書こう!②~毎日コツコツ続けるコツ!
小1の娘が100個ほどの漢字が読めるようになったので、「書き」に挑戦している話の続き。
2か月たって、よくよく分かった、当たり前のこと。
書けるようになるって時間がかかる!
しかも、何となくこんな感じというのは書けても、正確にとなるともうそれは大変。
そして、急に、
漢字って面倒くさい
という風に(涙)
それで、そういう時にやった手変え品替え軌跡をここでは紹介したい。
習慣化する
最初は、まだ1年生だし、気が向いたときにぽつぽつやっていったらいいかなと思っていたのだけど、
ぽつぽつやっていると身につきにくい(前のことをすぐ忘れている)
本人の気が向いたときに、私の時間が合わないことも
なので、早々に、
毎日コツコツ短時間
一週間5日一日15分
基本のルーティーンを親である私が決めた。
こういうところ、つまり、
環境を整備
するところでは、親の権限を発動した方がいいと私は思う。
それができるのは親だけで、長い目で見たときに必要なことだから。
ちなみに、一週間5日というのは子供に言わない。子供には、毎日という。
けど、疲れている日は力抜いてもいいよね~お互い、というスタンス(笑)
勉強することが普通の状態を作ると、時々
今日はなし!今日はゲーム!今日は日本語のマンガ!
というのがご褒美になる。そうでないと、そういう楽しいものにしか食いつかなくなるし、
勉強に向かうまでに時間がかかる。
進歩とゴールが見える仕組み
漢字を子供が嫌がる一つの理由が
ゴールが見えにくいこと
ドリルが好きな子とかだと、一冊隅々終わらせることにモチベーションが働いたりはする。
でも、本当は、ドリルを全部やらなくてもいいというのが私の考えなので、
今回は、「漢字がたのしくなるワーク①」の中から、私が必要だと思う
一字一字書くページ
お遊び気分でできるページ
の両方を抜粋して、小冊子にした。量にして半分くらいになるかな。
そして、表紙にシール表を付けた。全部たまったら、本人の好きなご褒美というニンジンつきで!
子供に選択権を
「書き順」の基本のところは、最初にやったけど、あとは、「自然」「体」などカテゴリーごとになっていて、どこから始めても変わらないので、
本人にやりたいページの選択権
をあげていた。この
自分で選ぶ
というひと手間、意外と大事。やらされ感がだいぶ減るし、本人も楽しいことと大変なことを自分の体調や気分に合わせて調整しながらやっていた。
「親の権限」と「子供の選択」をバランスよくやるといいと思う。なるべく、子供が選べるところは選ばしてあげるようにしている。
地道に頑張らないといけないページ
ゲーム感覚で楽しくできたページ
書く道具を工夫するだけで
基本は、ワークに書き込んでいくのだけど、いろいろなバージョンも用意した。
空書き
ホワイトボード
模造紙
カラーペン、筆ペン
など。
気分を高める小道具
だけど、時には、「鳥」など画数が多い字を書く時には、
マス内に収めるというプレッシャーを和らげる
ために、意図的にやることが必要。
別の場所に書けば、ワークに書き込まなくてもいいことにした。
こんな風にやりながら、今まで教室で、いきなり教えて書かせて、マスから出るな、とめはらいをしっかり!と要求していたことって、かなり乱暴だったなと思う。
まあ、それでも日本に住んでいる子なら8割方できてしまうのだけど、そりゃ、楽しくないだろうな、必要だから仕方なくやっている、親もやらせているんだろうなと思う。
それが海外育ちの子、バイリンガルの子だとそこがそういう風にならないので、工夫が必要。
というわけで、
習慣化と小ワザ
の話でした~。
漢字を書こう!①~書きの初めの一歩
漢字で遊ぼ!シリーズで紹介したように、娘小1は、4月から2ヶ月くらい遊びながら漢字に親しんでいた。
小学校1~2年生で習う100ほどのこの2か月くらいで漢字を8割がた読めるようになってきたので、ギアを1つ挙げて、「書き」に挑戦することにしたのが、6月後半。
約2カ月位、娘と取り組んだ途中経過をシリーズにまとめてどなたかの漢字の書き指導のヒントになればと思う。
指導の方針
- 細かいところにこだわりすぎない、100%書けるようにと思わない
- 唱えて覚えるという習慣をつける
- 書き順の大きな規則をつかむ
大きな流れ
- 漢字がたのしくなるワーク①に沿いながらも、ドリル的なページとゲーム要素が含むページを抜粋する。
- 1日15分、週5日くらいのペースで無理なく、でもたゆまず続ける。
指導時に気を付けたポイントと気づき
- 書き順の基本
細かい書き順にはこの先こだわらない代わりに、最初のところで書き順の基本はばっちり入れるように気合を入れた。
① 上から下
② 左から右
③ 横が先、縦はあと
④ 中を先に
⑤ 左に行く斜め線が先
⑥ 外が先
⑦ 貫く線はあと
⑧ そことじは最後
などをはじめに押さえて、あとは、漢字を書いている様子を見て、間違えているときはこの原則を思い出すように声をかけた。
夏休み中で横にいてあげられたのでそれができたが、慣れるまで表を作ってファイルの初めに貼り、そこに自分でそこに戻れるような仕組みを作るとよかったと思う。
- 新出漢字との出会い方
一回大体4-5字のペースで取り組んだ。ワークブックに沿って、
① カルタの読み札を読む
② 取り札漢字とマッチング
③ 漢字の中に隠れているもの(片仮名、知っている漢字)を見つける
④ かき順を予想⇒正しい書き順を確認
⑤ 唱えていってみる
⑥ ワークブックに書きこむ
⑦ 今日の学習が全部終わった時にホワイトボードに書く
①②でいいのは、
読み札を読むことで読みの練習になること
自然に漢字の成り立ちを理解できる
読み札にはフリガナがないので自然に予想
わからなくてもすぐ下に答えがあるので自分でできること!
ただ、海外育ちの子供の場合、この読み札の内容がすっと入るかは微妙。子供の日本語力によっては、この部分をもう少し丁寧に現地語を入れるか、アニメーションを入れるかなどの工夫が必要。
③で気を付けたのは、知っている部品に注目させること。
これは、二つの点で効果がある。
難しくない、できると感じる
書き間違いが減る(=消す労力がない分やる気をそがない)
漢字を分解合成する視点をもつ
この段階を省くと、以下のように「青」を書いてしまう。
④については、予想することで学びが主体的になる。いきなり正解を教えられ覚えさせられるより身につく。
間違えたら、「書き順の法則」に戻る
あっていたら、褒める
段々、間違わなくなってくるので、そのことを褒めてあげるといい。
⑤で特に気を付けたのは、
一画一言を原則にした線の唱え方
例えば、口の二画目を間違っても、「横、縦」と言ってはいけない!これは「カギ」に統一した。
また、このシリーズでは、「十のかくべえ」と言って、漢字のすべての線を10の線に言い分けるのだけど、私はこれを採用しなかった。なぜなら、一つの言い方に色々な言い方があるので、子供が混乱すると考えた。
ミチムラ式を参考に子供と以下のように、唱え文句を決めながら進んだ。
これも表にして少しずつ書き足し、子供が見えて振り返られる場所に貼っておくといいと思った。
また、段々、学習が進んでくるにつれて、唱え方を
線からパーツにステップアップ
していった。
例えば、「貝」を「たて、カギ、よこよこ…」というのではなく、「目、ハ」というように。
既習漢字はまとめて言う
子供が初めてそれを言い出した時には大いに褒めて、その後気づかない時には、「知っている漢字が隠れているよ~まとめていってみて~」と声を書けるといい。
また、「うけばこ」「うかんむり」「どうがまえ」など、頻繁に出てくるパーツは
部首名を教えて、それでいう
ようにした。
最後に、漢字がたのしくなるワークのいいところは、
カテゴリーごとに漢字を学べること
教科書のように、五月雨的にいろんな漢字をランダムに覚えるより、海外で育つ子供には、「体の部位」「動物」といったカテゴリーごとの方がつながりをつけて覚えやすいし、部首の学習にもつながるかなと思う。
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漢字の指導、スモールステップ踏む
漢字は
形、音、意味
の3つの要素を持つ。
当然この3つを相互に絡めあって覚えなければ漢字の習得する意味も無いし、そもそもなかなか入っていかないであろう。
例えば、「打」という字、
てへん+ちょうという形
「うつ」「ダ」という音
「打撲」「打率」など「うつ」という意味はもちろん、「打診」「打開」など動詞の語調を整える働き
など、三つの要素のどれかだけを教えてもあまり意味はない。
でも、マルチリンガル漢字指導研究会のみんなといろいろやってるうちに、
この3つを同時にやろうとしすぎたかな
と気づいた。入りやすいものからどんどん入れて
8割方知ってるという状態を作って
いって、残りの2割はぼちぼち埋めていくほうがいいのかなと。
なぜかというと、その方が
子供も学ぶ意欲が持ちやすいから。
そこで提案したいのが、SS漢字指導法と段階ごとに
SS漢字指導
1つ目のSは、スモールステップ。
もう一つSのは、スパイラル。
例えば、これまで補習校や日本の学校では、新出漢字の指導を、
形(書き順まで丁寧に)を教え、
音(読み方、音君まで)を教え、
意味(熟語をいくつも示し、漢字本来の持つ意味に気づかせるなど)を教え、
それを使えるようになるために短文作り
というように一気にやってきた。
一定のレベルの日本語力を持ち合わせる後にとっては、このようなやり方がうまくいくのだと思うのだけれども、
単調になりやすいし、日本語に十分に触れてない海外育ちの子には負担が大きい。
なので、この三つの要素を子供の状況に応じて、スモールステップにしたらいいと思うのだ。
具体的な話は小1娘への漢字指導の取り組みについて紹介する次の記事を参照してほしい。
「漢字で遊ぼ!」シリーズ①~ 既に書いているので「漢字学習」のカテゴリーを参照
「漢字を書こう!」シリーズ~ これから書く予定
たとえ3要素全部を一気に扱ったとしても、それぞれに
軽重をつけ、今の段階ではこれだけ抑えれば良い
というのは教師の方が明確に持っていくといいと思う。
そして、教える側は一気にインプットして自己満足するのではなく、
スパイラルに何度も扱うことで
インプットしたものが少しずつアウトプットできるように
考えていけばいいのかなと。
各段階での指導キーポイント
マルチリンガル漢字指導研究会では、子供の漢字習得を大きく3つの段階「ホップ」「ステップ」「ジャンプ」と考えている。
ざっくりいうと、小学校「低学年」「中学年」「高学年~」だけど、学年配当漢字で区切っているわけではない。
それぞれに指導の重点ポイントがある。
後は、漢字の習得レベルによっても重点を置くべきところが違うと思う。
私は、形→音→意の順番で漢字の習得が難しいと思っている。なので、
小学校の低学年の漢字レベルで形
中学年のレベルで音
高学年のレベルで意
それぞれ重点的に攻略していく必要があると。
つまり高学年の漢字で漢字の形を覚えられないなんと言ってることがないように、一画一画の書き順を教えているなどということがないように。
また、高学年になったら、新出漢字の読み方や意味の推測くらいができるようになってるように。
海外で日本語を教えていると、あれもこれもやらなくちゃいけない!時間がない!悪循環で
どんどん詰め込むだけに陥りがち
だけど、こんなふうに長いスパンで俯瞰すれば、その時その時必ず抑えなくちゃいけないポイントが見えてくる。
そのポイントを押さえつつ、臨機応変に子供たちの興味関心に寄り添いながら授業をして行けたらと思う。