世界の学校から

風来坊が綴る、世界の教育現場のあれこれ

「図鑑漢字ドリル」(学研)× 自閉症スペクトラム障害

お正月、実家に戻った時、

  自閉症スペクトラム障害の甥っ子(小5)、トーマス大好き、電車はまあまあ

に図鑑漢字ドリル(鉄道版)を試してみた。

 

 

大事にしたこと

  ① 本人のこだわりを大事にする。

  ② こだわりを上手に活用して、いい習慣にする。

  ③ 事前にやることを目に見えるように知らせる。

  ④ わからないときの解決方法を示し、選択させる。

  ⑤ 一度にひとつのことだけに集中する。

 

1日目

「はい、プレゼント。これで、一緒に漢字勉強しようか?」と投げかけると…

「えー、ヤダ」と反抗期の甥っ子、まずは否定から。

「えー、でも、これいろんな電車が載っているよ。好きなのあるかな?」とちらっと開きながら、大げさに「へぇ、こんな電車があるんだ」とか言って閉じる。

関心なさそうだが、自分でもその後、ちらちらと見ている。

おばあちゃんと勝手に裏表1ページやっていた。

そしたら、もう、「裏表1ページ日課」がこだわりに(笑)

なので、

  本人のこだわりを大事に

して、逆手にとって、

  こだわりを上手に活用して、いい習慣にする

ことに。

 

2日目

「えー、もうやったの?今日は一緒にやろう。たくさんやると大変だから、表だけやろう!その代わり、まず、一回、文を読んで。」

「ダメ!一日に裏表やらないといけない!」

「わかった、じゃあ、そうしよう。まず一回読んで」

「やだ!」

「〇君読む?私が読む?順番に読む?」

「読んで!」

「わかった、じゃあ読むから、指でたどっていてね。」

 

空欄の漢字を書きだすが、文意は無視している様子。

「九州ってどこ?どこ走る電車だろう?地図で見てみようか?」と声をかけると…

イライラしてきて、パニック気味。

  一度に二つのことは無理

と判断。漢字に集中することに。

間違っていてもその都度声はかけず、そのまま最後までやらせる。

 

色々な話を混ぜた方が、楽しく学習できるかなと思ったのだけど、この子の場合は、

  一度にひとつのことだけに集中する

方がいいんだなと、学んだ。

あとは、

  間違ってもすぐに声をかけないのはどんな子にでも基本

やっている横から、「違う」と言われるとやる気をそいでしまう。

間違っている漢字にであったら、そのまま最後まで声をかけず、最後に「二つ間違っているところがあるから、なおそうか。この漢字、おしい。左はあっているんだけど…」

 と声をかけると、うまくいった。

 

それでも、書けない字があると、パニック。

「できない、やめる」と言って席を立つ。

「気持ちが落ち着くまでぐるっと回っておいで、待っているよ」と声をかけると、数分後戻ってくる。

を何度か繰り返したので、次のように提案してみた。

 

「わからない時に解決する方法が、3つあるんだよ。

  1、ドリル巻末の一覧表で調べる

  2、IPADに入力して調べる 

  3、大人に聞く

 どれがいい?」

 

ここでのポイントは、

  わからないときの解決方法を示すこと

  好きな方法を選択させること

 自閉症の子供は物事が予定通りに進まないことにすごくストレスを感じる傾向があるので、特に先に、

  「絶対、わからない問題に出会うよ~出会ったら、こんな方法があるよ」

先手を打ってあげるといいんだなと思った。あとは、

  やらされている感を少しでも減らすため

に、または、

  一つの方法で解決できない時のため

選択肢を複数用意しておいてあげるといい。

 

最後、「途中、家出しちゃったけど、最後までよく頑張ったね。えらいよ。だんだん家出の時間が短くなるといいね!」と言って、学習終了!

 

3日目

「さあ、漢字しようか。」

「やだ!」

「今日帰っちゃうから、最後一緒にやりたかったんだけどな」

トコトコとドリルを取りにいく。

 

「これからはね、次の順番で勉強するよ。

1、文を読む。2、漢字を書く 3、もう一度文を読む」

(ホワイトボードに書いて見せる)

 

わからない漢字にであったら、

「昨日、解決方法を三つ教えたよね?どれがいい?」

「『大人に聞く』はさっき使ったから、今度ipadで調べてみる?」

 

ペースがつかめてきたので、

  事前にやることを目に見えるように知らせる

 ことから始めたら、スムーズだった。

 

この日は、迷っていたら、

  すぐ教えず、ヒントを上げる

ことを意識した。

例えば、「鉄道のどうって?動くかな?」と甥っ子。

「確かに電車は動くもんね。でも、鉄の道(みち)なんだよ。線路は道みたいにずっとつながっているでしょう?」

「あ、そうか。」と書いた後、ドリルの表紙をすかさず見て自分で確認!「あ、ほんとだ」とつぶやく。

私は、そこに書いてあるというのがよく分かったなぁ、写真みたいに視覚でカシャっと頭に記録されるんだなと、感心したのだった。

 

こういう声かけがうまくなったなと、自分も褒めた(笑)

これは、マルチリンガル漢字指導法研究会で皆さんと切磋琢磨しているおかげ!

コミュニティラーニング、万歳!

 

www.learnjapanonline.com

 

 上記で紹介した「図鑑ドリル」。

他にもいろいろ種類があるんで、是非、子供の興味に合わせて選んでほしい ↓

どうせ漢字を勉強するなら、好きなことで!